この夏の贈りもの
その時ばかりはそう思った。


死にたい。


どうしてあたしばかりがこんなに恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだろう。


だけどそれを相談できる相手なんていない。


胸の大きさを自慢しているようにしか聞こえなくて、余計にイジメられてしまうのがわかっていたから。


それからあたしはできるだけ目立たないように、静かない生徒になった。


教室の隅でずっと本を読んでいるような生徒。


本当は友達と遊びたかったし、メークもしたかった。


だけど、そんな事をしていたら目立ってしまう。


あたしは自分のやりたいことを押し殺すようになった。


そうやって1年が無事に過ぎていくのを願うばかりだった。


でも……高校に入学してから胸は更に成長して、そうなるといくら本人が地味でも嫌でも目立ってしまうようになっていた。


露骨に視線を向けて来る生徒が多くなった。


できるだけ胸を小さく見せようと頑張れば頑張るほど猫背になり、胸を隠すために伸ばした髪の毛は腰に届いてしまいそうだった。


そんなあたしを、みんなは指を指して笑うようになった。


『なにあれ、気持ち悪い』


『髪長すぎ、ブスのくせに似合ってないし』
< 31 / 218 >

この作品をシェア

pagetop