この夏の贈りもの
唯人の言葉があたしが言った『大嫌いだよ』と言う言葉の返事なのだと気が付くまでに、少しだけ時間がかかった。


「ど、どこがよ」


あたしは慌ててそう言い、唯人から視線を逸らせた。


あたしは胸以外に褒められたことなんて1度もない。


ブスで運動音痴で勉強ができない。


そんなクラスカーストの最低ランクだ。


「どこがって、チホは自分の顔もまともにみたことがないのか?」


唯人はそう言っておかしそうに笑い始めた。


「見たことあるに決まってるでしょ!?」


思わず大きな声になってしまい、乗車中のお客さんが怪訝そうな顔であたしを見て来る。


あたしは咳払いをして、窓の外へと視線を向けた。


「だったら、自分の魅力をよくわかってるはずなのに」


唯人が困ったような声色でそう言った。


あたしの魅力ってなによ。


あたしの魅力なんて胸以外になにもない。


この胸さえ、あたしを悩ませるものの1つになっている。


あたしは駅に着くまで、唯人と会話をすることをやめたのだった。
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