この夏の贈りもの

訪問者

アイスを半分ほど食べたところで玄関のチャイムが鳴った。


その音に反応して視線をドアへと向ける。


しかし動くつもりはなかった。


部屋を一歩出れば灼熱地獄が待ち受けている。


自分からのこのこと地獄に足を踏み入れる気はなかった。


ピンポーン。


チャイムがまた鳴る。


それでも無視をしてアイスを頬張った。


少し溶けて来たミルク味のアイスが口いっぱいに広がり、そこから幸せが体にめぐって行く感じがする。


こういう、日常的な幸せがあたしは大好きだ。


ピンポーン、ピンポーン。


更にチャイムは鳴り続けて、あたしはしかめっ面をした。


あたしの小さな小さなな幸せすら奪おうとしている人間が玄関先にいる。


絶対に出てやるもんか。


少し意地になってそう決めると、またアイスを口に運んだ。


さっきよりも少しだけ味が落ちた気がするのは、しつこくチャイムがなっているせいだ。


ピンポンピンポンピンポーン。