この夏の贈りもの
まるで睨まれているような感覚になって一瞬ひるんだが、翔は元々目つきが悪いのだ。


「家まで行っても相手には大空の姿は見えないよ」


「それならチホが行けばいい」


「行けるわけないでしょ? 全く面識がないんだから」


「じゃぁどうするんだよ」


「それを、これから考えるの!」


あたしはそう言い、河原へ向かって歩き出した。


もう1度川に足をつけてみたいと思った。


時間はたっぷりあるし、考えてみれば相手の女性がまだこの家に住んでいるかどうかもわからない。


「チホは相変わらず川が好きだな」


唯人があたしの後を追いかけてきてそう言った。


まるで昔からそうだった。


というような言い方だ。


「昨日の川がすごく綺麗だったから」


あたしはそう返事をして靴と靴下を脱いだ。


目の前に流れている川も底の方まで透明で、沢山の小魚が泳いでいるのが見えた。


川岸に座って昨日と同じように足を投げ出す。


水が絡み付いて来た瞬間自然と笑顔がこぼれた。


「気持ちいい!! みんなもやってみなよ!」


そう言うと、男子たちが同じように川岸に腰を下ろし、足を投げ出した。
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