この夏の贈りもの
みんな水の中に足を入れているけれど、水が足を避けるようにして通っているのはあたしを入れて2人分だけだった。


みんな、やっぱり死んでるんだ。


「本当だ気持ちがいい!!」


そう言ったのは大空だった。


大空の足は水をすり抜けてしまっているから、気持ちよさは伝わっていないはずだ。


「さすがに冷たいな」


翔が釣り目を下げてそう言う。


「それってさ、イメージ?」


あたしが聞くと、大空は「そうだよ」と、答えた。


幽霊になっても、生きている間に経験したことはちゃんと覚えている。


その経験を元にイメージしたものが、体感となって体に流れ込んでくるらしい。


イメージの強さによっては、壊れている物が壊れていなかったり、枯れている花が枯れていないように見せる事もできるのだと、お父さんから教えてもらったことがあった。


そうやって、未練が残っている幽霊たちは生前と同じ生活を繰り返しているのだと。


「すごいよね、幽霊って。死んでいるのに、死んでないように生活をしてるんだから」


感心してそう言うと、「生きている人間の方がずっとすごいよ」と、大空が言った。
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