この夏の贈りもの
「生きてたらなんでもできるからな。嫌いな奴と仲良くなれたり、苦手な勉強を得意になれたり。可能性は無限大に広がってるんだから」


翔がそう言い、水面に視線を向けた。


可能性は無限大……か。


そんなことは考えたこともなかった。


嫌いな人は嫌いだし。


苦手な科目はやっぱり苦手。


いくら頑張ってもどうにもならないものも、沢山あふれかえっている。


そう言うものばかりが目について仕方がない。


しばらく水面と戯れていると、1人の女性が歩いてくるのが見えた。


白いワンピースに麦わら帽子をかぶった女性だ。


その人を見た瞬間、大空が「あ!!」と、大きな声を上げて一瞬にして頬を真っ赤に染めた。


どうやら待ち人来たり。


ということらしい。


「どうする、大空?」


あたしがそう聞くより先に、大空は駆け出していた。


ずっと心残りだった彼女へ向けて足を進める。


「ちょっと、大空!!」


あたしは素足のまま大空を追いかけた。
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