この夏の贈りもの
どうやら憑依が成功したようだ。


あたしの体に乗り移った大空はすぐに彼女へ視線をうつした。


もう門の前まで移動して来ている。


「ほら早く行かないと!」


あたしは脳内を通じて大空に話しかけた。


「わかってる!」


見た目があたしになった大空はすぐに走りだした。


大空を通じて風が吹き抜けていくのを感じた。


「弘美ちゃん!!」


大きな声で呼ばれて彼女は驚いたように目を見開いて立ち止まった。


「誰……?」


困惑した表情を浮かべる彼女。


見知らぬあたしに話しかけられているのだから、当然だった。


それでも彼女は家の中に逃げ込もうとはしなかった。


彼女なりに何かを感じ取っているのかもしれない。


「僕だよ、大空だよ!」


大空は彼女を目の前にして嬉しそうな声を上げる。
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