この夏の贈りもの
「大空……?」


眉間にシワを寄せてそう聞き返す彼女。


突然声をかけられて死んだはずの人間の名前を出されたら、誰だって不機嫌になるだろう。


「大空、彼女との思い出話を聞かせてあげればいいと思う」


あたしがそう言うと、大空はなにかを思い出すように「う~ん、そうだなぁ~」と、呟き始めた。


その様子に彼女の表情はますます硬くなっていく。


いきなり独り言を始めたからだ。


ハラハラしながら見守っていると「あ、そうだ!」と、思い出したように大きな声を上げた。


彼女は驚いて飛びのいた。


「いちいち過度に反応しないの! 弘美ちゃんがビックリしてるでしょ!」


あたしの忠告なんて聞こえていないようで、大空は「ねぇ僕と一緒に星空を見たことを覚えてる?」

と、勝手に話始めた。


もう、好きにして。


呆れながらため息を吐き出すあたし。


「何のことですか?」


「ほら、一緒にあの丘の上の学校で星を見ただろ?」


そう言い、大空は竹丘高校がある場所を指さした。


弘美ちゃんは怪訝そうな表情を浮かべたまま、また一歩後ずさりをした。


「グラウンドで一緒に横になって、天の川を見たんだ」


大空は懐かしそうな声でそう言った。
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