この夏の贈りもの
結構ロマンチックなことしてるんじゃん。


大空の事だから一緒に川遊びをしていたのかと、勝手に思い込んでいた。


「誰からその話を聞いたの?」


弘美ちゃんが警戒心を強めてそう言った。


「聞いたんじゃないよ。僕は大空だって言ったじゃないか」


「そんなハズないでしょ! だって大空は……」

「死んだよ。僕は、死んだ」


弘美ちゃんの言葉を遮るように、大空は言った。


その瞬間、弘美ちゃんの表情がぐにゃりと歪む。


綺麗な顔が辛さと悲しさを一杯に出している。


「それを知っててこんな悪戯をするなんて、最低!!」


弘美ちゃんの悲鳴に似た声が響き渡った。


ビリビリと鼓膜を揺るがす声。


青空はどんよりとした雲に覆われていく。


いけない!


咄嗟にそう思うが、今のあたしは大空の中にいる。


このままじゃなにもできない。
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