この夏の贈りもの
チャイム
４５分の授業が終わりを迎えようとしていた。


有馬は今の熱心に国語の勉強を生徒たちに教えている。


しかしその心は現実へと引き戻されつつあるようで、教室にいたイメージの生徒たちは半分までに現象していた。


それでも有馬は残りの生徒たちへ懸命に勉強を教え続けた。


自分の知っている限りの知識をフル活用し、４５分という短い時間にすべてをかけていた。


額には汗が滲み、身振り手振りで説明を続ける。


その熱心な教育の仕方を見ていると、心の奥がジンッと熱を持つようだった。


有馬がどれほど教師になりたかったのかが痛いくらいに伝わって来た。


できればずっとこのままでいさせてあげたい。


ずっとずっと、夢の中で暮らしていけたら有馬は幸せなのに。


そう思うが、時間は無情にも過ぎていく。


そして、ついに４５分が終るチャイムが教室に鳴り響き始めた。


有馬が教卓の前でゆっくりと教科書を閉じた。


その表情はとても穏やかで、そして今までで一番の笑顔を浮かべていた。


チャイムがなり響くたびに、イメージがパチパチと弾けるように消えて行く。


大空のイメージがパチンッとはじけ飛んだ時、有馬のスーツが制服に変わった。
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