この夏の贈りもの
教科書もノートも鉛筆も消え、チャイムの音も消えて行った。


その瞬間、有馬の頬に涙が流れて行くのを見た。


「俺は、幸せだった」


力強くそう言う有馬。


「俺は、夢中になれる夢を持てて幸せだった!!」


有馬はそう言い、笑っていた。


泣きながら、笑っていた。


それは有馬が本気で夢を追いかけてきたからこその、顔だった。


「有馬の授業はすげぇよ……」


そう言ったのは裕だった。


裕もまた、泣き笑いの表情だった。


「生きてたらぜってぇ、教師になれたのに……」


「なるよ」


有馬が真っ直ぐに裕を見てそう言った。


その体はすでに金色の光に包まれていた。


有馬の心が満足し、成仏できる状態になったのだ。


「生まれ変わって、夢を叶える」


有馬は力強い声でそう言い……無数の星となって消えて行ったのだった。
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