この夏の贈りもの
「少し外を歩いてみる? 気分転換にはなるかもしれないし」


あたしが誘うと翔は素直に頷いた。


と言っても、この辺の土地勘は翔の方が詳しい。


校舎から出ると、あたしが翔について歩く形になった。


「チホ、あの木を見て見ろよ」


そう言われて、翔が指さす木へ視線を向けた。


校庭の隅に植えられているひときわ大きな桜の木。


今は緑色の葉がついているが、春になればきっと立派な花を咲かせるんだろう。


「すごい、おっきいね」


桜の木の下まで行って見上げると、その大きさに圧巻される。


幹に両手をまわしてみても、半周すらしない。


きっと、ずっと、ずーっと昔からこの桜はここで咲き続けて来たんだろう。


竹丘男子高校に通っている生徒たちの目を、先生たちの目を楽しませていたに違いない。


「この桜の木の下で告白をすると気持ちが通じる。そういう言い伝えがあるんだ」


翔にそう言われて、あたしは思わず木から飛びのいて翔を見た。
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