花一刻、〜新撰組〜

「ここに居ると、月が手に取れそうなくらい
近くにあるように感じませんか。」

沖田さんが窓の外に手を伸ばして、
掴むような仕草をする。

月の光を浴びたその手は、白く細く見え、
百合の花のようだった。

「ええ。沖田様は、月の中にはうさぎが
いるという逸話は信じてますか。」

「それは子供の頃からずっとですよ!いつか月
月に行けるようになれば、
うさぎが長年付いている餅が食いたいな。」

あははっ。沖田さんらしい答えだなと思った。
あたしも楽しくなって笑い出す。

こんなに心から笑えたのは久々かもしれない。
いつも、愛想笑いばかり、心もこの部屋の
枯れた花のように廃れていたものだ。

「では、いつか月に行けるようになった際には
わっちも連れて行っておくんなまし。」

「もちろん。」

二人でゆびきりげんまんをするように、
小指を交わした。

こんな実現するかも分からない、例えばー
小さな子供の将来一緒に結婚しようね。みたいな、約束でさえ嬉しく感じるのはなぜだろう?

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