花一刻、〜新撰組〜
「絶対でありんすか?」
「もちろん。」
交わした小指が熱かった。
春風が桜の香りを乗せて2人を包んだ。
「おい!総司!!」
びくっ。後ろから。階段を上る音とともに声がした。
驚いて振り向くと…。
「近藤様!土方様!」
そこには、まぎれもなく本物の新撰組隊長と、鬼の副長が立っていた。
「いつまでも帰ってこねぇから、すっかり闇討ちにあったかと思いきや、女と逢い引きか!」
がはははは。近藤さんが笑い出す。
沖田さんは困ったように、
「違いますよ!ただお互い月が好きでみていた
だけです!!」
いつのまにか交わした小指は離れていて、
その小指には余熱がじぃんと、残っているだけ。もう少し、あのままで居たかった、と心の底のあたしが言っているような気がした。
「その子は座敷では見なかった顔だな。
名は?」
近藤さんはあたしに聞いた。
「三島屋の、重音でありんす。」