花一刻、〜新撰組〜
適当な道を選んで歩いて行くと、
大門の近くに来ている事に気づいた。
この門を一歩出れば、外の世界。
だけど、あたしたち遊女は、死ぬか外の人に
大金を積んで結婚してもらわないと出れない
の。
この大門の側には、下級の見世が並ぶ。
この付近はとても静かで、道にはあたし
以外誰もいなかった。
下級見世の通りを通る。
壊れかけた長屋が並ぶ。
障子の白い和紙の部分が無くなった、障子窓からは、下級女郎がこちらを見ているのがわかった。
あたしは、あの女の人たちより、いい着物も着ている。
ここに高級見世の遊女が来るのは珍しいのだろう。
戸の開いた長屋からは女郎の顔がのぞいてい
た。
その顔はにらむような怖い顔で、思わず目を反らした。
空はだんだん曇ってきて、今にも雨が降ってきそうだった。
いきなりだった。
ぐいっ。着物の袖を後ろへ引かれた。
「えっ!」
後ろを見ると、知らない男がいた。
「高級見世の遊女がこんな場所に来ちゃぁ、
襲ってと言っているようなもんなんだなぁ
。」
「っ…。ぁ…。」
怖くて声が出ない。
助けて。誰か助けて。
男はあたしの帯をほどこうと手をかけた。
男の力はどんどん増していく。
誰か…助けて。
その時…、
「その女を離せ。」