花一刻、〜新撰組〜
誰も気付いてないし、あたしがやるしか無いか…。
「茜音、あたしは別のことをやるから、
茜音も好きなようにしなんし。」
「はーい。」
茜音は自由になれた小鳥のように即座に
座敷の奥へ消えていった。
あたしは、襖を静かに閉め、玄関まで行くと、
地道に下駄を整え始めた。
夜もだんだん深くなってきた。
座敷から漏れる灯りを頼りに、下駄の鼻緒の
柄を合わせて置いていくが、とても見えづらい。
ふいに、襖が空いて明るくなった。
「そこで、なにしてるのですか。」
あたしは、とっさに振り向く。
そこにいたのは…。
「沖田様!」
「あはは。随分驚かれるのですね。」
近くで見る沖田さんは、とても爽やか顔をしていた。まだ青少年のようなあどけない笑顔で
笑う。お兄さんという言葉より、弟、という言葉が似合う。