花一刻、〜新撰組〜
私は驚きで言葉がでなかった。
まさか、お話ができるなんて。
そして、二人きりで、話せるなんて。
「沖田様は、どうしてこちらに…。」
「どうも、お座敷が苦手で…。」
沖田さんは苦笑すると、頭を掻いた。
確か沖田さんは、女遊びはしないという噂を聞いたことがある。
京都中で有名な男前なら、寄ってくる女なんて
数多いと思うのに、あの噂は本当だったんだ。
「用を足すといって出てきてしまいました。」
「そうでありんすか。」
数秒の沈黙…。こういう場面で機転がきかないから、あたしはいつまでも売れっ子になれないのだろう。
沈黙を破ったのは彼だった。
「今日は、満月なんですよ。」
「そうでありんすか。京都の月は綺麗でありんす。特に春は桜の香りとが夜風に乗ってきて、
とても風情がありんす。」
「私も、そう思っていました。
ぜひ、いっしょに観に行きませんか?
私、良い場所を知っているんです。」