花一刻、〜新撰組〜
どきっ…。
今、なんて言ったの?
月を一緒に見ようって言ってくれたんだよね?
考えるより先に、あたしの口は動いていた。
「はい。私も行きとうござんす。」
「じゃあ、行こうか。」
その青年は笑った。
二人で茶屋の二階に上がる。
階段は玄関のすぐそばにある。
ぎしぎしと、段がきしむ。
階段を上った先には、畳四枚ぐらいの小さな座敷が一つあった。そこには、障子窓が一つと、
高そうなつぼに枯れた花が生けてあった。
そして、誰かが使った後のような布団。
小さな障子窓を開けると、月の光が座敷に、
溢れんばかりに降ってきた。
「綺麗。」
小さな障子窓の外には大きくてまんまるの月が、漆黒の空に浮いていた。
小さな障子窓から、2人で月を見ようとするものだから自然と距離は近くなる。
「見えますか。」
沖田さんは、優しいく甘い声で聞くと、あたしの肩を、ゆっくりと引き寄せた。