花一刻、〜新撰組〜

どきっ…。
今、なんて言ったの?
月を一緒に見ようって言ってくれたんだよね?

考えるより先に、あたしの口は動いていた。

「はい。私も行きとうござんす。」

「じゃあ、行こうか。」

その青年は笑った。

二人で茶屋の二階に上がる。
階段は玄関のすぐそばにある。
ぎしぎしと、段がきしむ。

階段を上った先には、畳四枚ぐらいの小さな座敷が一つあった。そこには、障子窓が一つと、
高そうなつぼに枯れた花が生けてあった。
そして、誰かが使った後のような布団。

小さな障子窓を開けると、月の光が座敷に、
溢れんばかりに降ってきた。

「綺麗。」

小さな障子窓の外には大きくてまんまるの月が、漆黒の空に浮いていた。

小さな障子窓から、2人で月を見ようとするものだから自然と距離は近くなる。

「見えますか。」

沖田さんは、優しいく甘い声で聞くと、あたしの肩を、ゆっくりと引き寄せた。
< 8 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop