花一刻、〜新撰組〜
「あっ…。」
思わず声が漏れる。彼の体温が伝わる。
こんなの、され慣れてるのに、今まで何度男に
肩を、寄せられただろう。きっと数え切れない。今まで、こんな事されても何も感じなかった。
だけど、今回は別。
鼓動が早くなる。顔が口に引いた紅のように
染まるのを感じる。どうか、このどきどきの音が彼に聞こえませんように。
そっと、沖田さんの横顔を見る。顔が近い。
月に照らされたその横顔は、青年の影を残しながらも男前でかっこよかった。
じぃっと見つめていると、目が合った。
お互い、意識をしてしまい、目を反らす。
「充分男前でありんす。
女の子、慣れてるでしょう?」
あたしは、彼の肩のラインを手で優しくなぞる。
「こういう場面では、男が先を行かないと、
みっともないと思ったのですが…。
それより、月、みましょうよ!」
沖田さんは焦って、月の方へ目を反らす。
ぷっ。あたしは吹き出してしまう。
あどけない青年が無理に大人の真似をしてい
るみたいだった。可愛い。