花の降る午後
あなたは誰ですか?

「あっ…いやっ!」

密やかな吐息が空気を震わす。

薄暗い部屋。
男女の営み。

先刻からあたしの上で動く、男の息使いが酷く耳障りだ。


早くして。

貴方じゃないって分かったから。

早くお仕舞いにして。



男が小さく呻き、ゴム越しに熱を感じた瞬間、吐き気がした…。




あたしは間違っているのかしら?

間違っているのかしらね?






排泄行為に満足しきった男は、仰向けになり忙しなく呼吸を繰り返している。


一瞬の快楽を得る為だけに、息を切らして頑張る男を見て、不思議に思う。

これは毎度のこと。



だらしない男を尻目に、さっさとベッドからおりてシャワーを浴びる。

一刻も早く見知らぬ男の跡を消すために。


温かなお湯を浴びると、少し気分が良くなってきた。

あたしがシャワーを終える前に、あの男は出て行ってくれるかしら。

眠り込んでいたりしたら…嫌悪のあまり首を締めてやりたくたなるだろう。

きっと。




シャワーを終え、バスローブを羽織って戻ってみると男の姿はなかったが、枕元に3枚の紙幣が置かれていた。

ボフッと勢い良くベッドに寝転がり紙幣を手に取ってみる。

「いらないのに・・・」

誰かに言い訳するようにポツリと呟く。


いつからだっけ?
こんなことをするようになったのは。

いつからだっけ?
あの人の夢を見るようになったのは。



あの人と巡り逢いたいと
心から願うようになったのは

いつからだっけ?





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