花の降る午後
あなたは誰ですか?
「あっ…いやっ!」
密やかな吐息が空気を震わす。
薄暗い部屋。
男女の営み。
先刻からあたしの上で動く、男の息使いが酷く耳障りだ。
早くして。
貴方じゃないって分かったから。
早くお仕舞いにして。
男が小さく呻き、ゴム越しに熱を感じた瞬間、吐き気がした…。
あたしは間違っているのかしら?
間違っているのかしらね?
*
排泄行為に満足しきった男は、仰向けになり忙しなく呼吸を繰り返している。
一瞬の快楽を得る為だけに、息を切らして頑張る男を見て、不思議に思う。
これは毎度のこと。
だらしない男を尻目に、さっさとベッドからおりてシャワーを浴びる。
一刻も早く見知らぬ男の跡を消すために。
温かなお湯を浴びると、少し気分が良くなってきた。
あたしがシャワーを終える前に、あの男は出て行ってくれるかしら。
眠り込んでいたりしたら…嫌悪のあまり首を締めてやりたくたなるだろう。
きっと。
*
シャワーを終え、バスローブを羽織って戻ってみると男の姿はなかったが、枕元に3枚の紙幣が置かれていた。
ボフッと勢い良くベッドに寝転がり紙幣を手に取ってみる。
「いらないのに・・・」
誰かに言い訳するようにポツリと呟く。
いつからだっけ?
こんなことをするようになったのは。
いつからだっけ?
あの人の夢を見るようになったのは。
あの人と巡り逢いたいと
心から願うようになったのは
いつからだっけ?
*