ないしょばなし。
嫌でも思い出す。
数学のテストが悪かったとか、
aikoの新曲が気に入ったとか、
今日は月がきれいだとか。
そんなくだらないことを一番に伝えたいのは、他でもない章太朗だ。
だけど章太朗は部活が忙しいのか、
メールはめったに返ってこなかったし、
電話なんて繋がったためしがなかった。
「ねぇ、弥生。
気付いてると思うけど、ひどいよ?その顔」
「あは、やっぱり?
実は昨日あんまり眠れなかったんだよね…」
綺麗な黒髪をショートカットにした背の高い谷原千恵子が、あたしの前の木下くんの席に座る。
頭が良くて頼りになる千恵子とは
小学校5年からの付き合いだ。
「西口くんのアドでしょ?
眠れないほど泣いたの?」
千恵子に言わせると、
あたしの気持ちはバレバレらしい。
だけど千恵子以外には何も言われないから、
やっぱり千恵子の勘がいいだけなんじゃないかと思う。
聞く気も起きないくらい公認なだけだよ、って千恵子は言うけど。