恋のルール教えて下さい ~憧れの課長と大人の恋~

「もしもし」

何も考えずに、不用意に電話に出てしまったことを後悔した。

留守番電話にしておけばよかった。そうすれば、彼と話さずに済んだのに。

――和泉?

「はい」いつもの声だ。耳元に届く声が頭の中で響いてくる。
私は、携帯を耳から少し離した。

――今、話しても大丈夫か?

「はい」

――外にいるのか?

「そうですけど」

――和泉。今日、これから会えないかな?

「これからですか?もう、8時過ぎてますよ。遅いです」

普段なら食事を終えてお風呂に入ってる時間だ。

夕食を食べて、少しでも早く家に帰ってベッドで眠りたい。

――俺の方は、いくら遅くてもいいんだけど。

「それに、私、家の近くのスーパーまで来てますから。
今からまた、電車に乗って出かけたくないです。もう疲れてるので。
もう、勘弁してください……」

――いいよ。君はそのままじっとしてて。俺の方がそっちに行くから。スーパーにいるんだろう?駅前のだろう?

「ええっ?ちょっと、葛城さん、今から、こっちに来るみたいな言い方しないでください」

――あと少しだから。そのまま待ていて。20分で行くから。そのまま待ってて

「葛城さん?ちょっと待って、私、会うなんて言ってないですよ」

――ほんのちょっと、顔を見たいだけだから。少しだけ。君は何もしなくていい。俺が見つけるから。

「葛城さん……もう、買い物終わりましたから。私、帰ります」


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