雨を待ちわびて
「亨さん?亨さんは、身体、鍛えているのですか?
病院にはそんな、ジムみたいな施設は無いですよね?」
何かしている感じは無いのに、亨さんは程よく引き締まっているから、聞いてみたくなった。
「直さんは?」
「え?私?!」
うー…私は鍛えてなんか無い。
「元々の体型っていうのもあるでしょ?」
んん。まあ、どうなのかな〜。
「俺は多分遺伝子的に太らない体質なんだと思いますよ。それプラス、ちょっとした事かな。
ほら、事務机に座りながら、部分的に鍛えたり出来る事ってあるでしょ?
効果が出てるとするなら、そんな事くらいですよ?
そういうのをチョコチョコしてるからかなぁ。直さんをおんぶして腕立て伏せしたら、腕も腹筋も鍛えられそうですね」
あ、…は、は。…新種の大きなオンブバッタみたい。
何故だかそう思ったら緑の全身タイツ姿まで想像してしまった。
「フフ、面白い、亨さん」
「え?何を想像したんです?」
「内緒〜、フフ。ハハハ」
「フッ。大方、バッタでしょ?おんぶだから」
「あー、はい。全身タイツの。フフ。緑のタイツです、亨さんも私も」
「…はい、身体、乗せてください。背中じゃなくて、…こっち。もう少し、寝ます。付き合ってください」
「…はい」
話していると楽しいです、…幸せです。
自分に都合のいい求人なんて早々無いと思っていた。
亨さんとすれ違いはしたくないから、出来たら、10時以降で16時までの中でが希望だった。夜勤明けになる時は仕事を入れない。
そしたら、条件を聞いてくれるところが見つかった。
事務の仕事で、いつもいつも忙しい訳じゃないから、自分で配分してしてくれればいいよって事だった。
希望通りに仕事が出来る。少人数のアットホーム的な会社だった。
表立つ事も無いし、採用して貰ってとてもラッキーだった。
…急にこんな仕事にも恵まれるなんて。運、使い過ぎじゃないの?
…不幸付いていると、何か落とし穴や、しっぺ返しがあるんじゃないかと、素直に喜べ無くなってしまう。