雨を待ちわびて
私…一人になった方がいいのかも知れない。
当たり前に人を好きになる資格は無いのかも知れない。人の事、とやかく言える立場ではない。
救われる為に求め、人に好きになって欲しかったのかも知れない。
「直さん?どうかしましたか?」
いけない。この人の前で考え事をしてしまっては、簡単に読まれてしまう。
「心配事ですか?仕事で何かありましたか?
それとも、仕事以外ですか?」
「え?」
…何か、…知っている?
穏やかな声音だけど、何かズシッとくる。
「特に、何もありません。大丈夫です。職場の人はとても良くしてくれます」
「そうですか。…それは良かった。でも、嘘はいけませんね」
「え」
「すみませんでした。嘘、とは違いますね。刑事さんはお元気でしたか?」
「え」
「…神様の悪戯とでも言うのでしょうか。偶然、車を見てしまいました。
黒い車です。いかにも刑事さんが乗りそうな車。
俺は外に居たんですよ。患者さんと病院の外を散歩していました。
それで偶然、刑事さんを見掛けた。
…仕事では無かったのでしょうね。ここら辺で凶悪事件は起きていないから。
通り過ぎて行くのを見ただけでしたから、どこか、現場に向かっている途中だったかも知れません。
…そうだ、そういえば、直さんの職場の近くじゃなかったでしたっけ?
強盗殺人があったのって」
…。
夕方、片霧さんが言った事を思い出していた。
片霧さんはベッドの中で、私を抱いたまま、話し始めた。
「俺はこんなだから、話す言葉、内容、共にキツイかも知れない。慣れていない人間は傷つける。慣れても傷ついているか…。
だけど、あながち、的外れでも無いと思う。…直は真面じゃない」