雨を待ちわびて
「直…」
「え?」
「どこまで意識は飛んでいましたか?」
「あ…」
違う、確かに片霧さんの話を思い出していたけど、今、亨さん、直、って…。
「お風呂は溜めてあるのですか?」
「はい、溜めてます」
「直は?」
あ、…まただ。
「私、暑かったから、取り敢えずシャワーだけしました」
「いけませんね。湯舟に浸かる事で疲れは取れるらしいですから。後で一緒に入りましょう。
今はまだ食後ですから、後でね」
「えっ」
「そんなに驚かなくても。初めてでもあるまいし」
…確かに。悪夢で汗をかい時も、一緒に入ったけど。
急になんて…何か、確かめたいのだろうか。
まさか…片霧さんの…痕跡?
もしかしたら、気がつかない内に、マークされてたりして…。
あー、シャワーした時、鏡でちゃんと確認しておけば良かった。
…そういえば、あの時のうなじのキスマークは、本当に亨さんだったのだろうか。
片霧さんだとしたら、今日、同じようにしたかも知れない。
髪は下ろしているし、…解らない。
…激しいのをして欲しいなんて…言わなきゃ良かった。あんな時にされていたら、私、気がつかないと思う。
……墓穴を掘ってる。
「ん?水出しっぱなしになってる。もう、とっくの昔に洗えてますよ?」
あ、…泡は綺麗に無くなっていた。
「珈琲、入れましょうか」
「そうですね、お願いします」
動揺が隠せない…。片霧さんに与えられた快楽に流された。
…軽い女だ。