雨を待ちわびて

「あれだな。俺も先生も駄目ってなったら、後は…石井だな」

「そうですね」

「あいつは、何気に直の事好きだからな。事情も解ってるし」

「既に一目惚れしてるでしょ?」

「ああ、直の写真を見た時からだな」

「へぇ、直さんの写真なんてあったんですね」

「盗撮だ。…あの盗撮じゃなくて、マンションの管理者が撮ったやつなんだ。ちょっとした、買い物帰りの物で、傘を差してチラッと空を仰いだような写真だ」

「何か、雰囲気のある写真ですね」

「ああ、いい感じに撮ってやがった。それをその管理者はいつも眺めていたらしいんだけど…」

「…何とも…、それはそれは」

「あの…」

「ん…なんだ?直」

一体、これはなんの会合なのよ…。三人でご飯なんて。
たまたま片霧さんが休みで、私に連絡して来た。

【どうだ?】

なんて意味深で、下衆なメール…だと思った。
だから亨さんに見せた。
そしたら【いいよ、バス停の近く迄迎えに来て】って返してしまった。

そして、今だ。
迎えに来て、納得のいかない片霧さんの車に、亨さんと乗り込んだ。折角なんだし、ご飯にでも行きましょうって、亨さんが。
私なんか其方退けで、事件絡みの話やら、…ピー音を入れたくなる話やら…。
…堪えられない。

「直さんはご飯終わったら連れて帰りますから」

「何言ってやがる。【いいよ】って送って来てる。直は俺ん家に行く」

「はぁ、そもそも、このメール自体、何がどうなのか、明確ではありません」

「そんなモノ無くても、当事者には充分解る」

…。

「直さんも俺も、最初から、食事どうだ?って思ってましたけど?」

「フ、…嘘だな。直には解ってた、な?直」

……。

「あの返信はですね、亨さんがしたんです。私は片霧さんに何も言ってないでしょ?」

…。

ブー、ブー。

…。

「片霧さん…鳴ってますよ」

ブー、ブー。

「片霧さん」

「はぁ…出たく無い」

「駄目ですよ」

…。

「…はい、片霧。………酷いな、ふぅ。…飯?済んでる。
…ああ、……、解った。解ってる…、すぐ行くよ」

「緊急のようですね」

「はぁ…、石井のやつだ…。残念ながら、直も連れ去れ無いは、送る事も出来なくなった」

「気になさらずに、お仕事ですからどうぞ」

…。


「直、またな」

「または無いですよ。俺達は駄目になって無いですから。俺、見張ってますから」

…。

「片霧さん、気をつけてくださいね」

「おお。先生、駄目になったら迷わず言って来てくださいよ。
俺がずっと守るんで」

「はい、とは言いません。そうだ…、その時は例の彼にお願いします。真面目な小犬君に守って貰います」

私を無視して、つき合う相手を決めないで!
…本当に、もう。
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