雨を待ちわびて
-Ⅷ-お節介って訳じゃないですよ

カラン…。

ドアのカウベルが来客を知らせた。
あ、ここです。
言葉は心で発して、立ち上がって手をあげた。

「ごめんなさい…。お待たせしてしまいましたか?」

あまりつばの広くないストローハットを脱ぎながら席に近付いてくる。

「いえ、未だ待ち合わせの時間5分前です」

「あ、ごめんなさい、このお水、頂いてもいい?」

あっ。

返事を返すのも待たずに、席に着くなり飲み干してしまった。
水を飲み込む度、ゆっくり喉が上下に波打つ。
陽が傾いたとはいえ、篭るような暑さは未だ残っている。
首をツーッと汗が伝った。

「ふぅ。ありがとう。暑かった〜。…ん?」

「…あ、いえ」

ゴク……艶めかしい。

「えっと、石井さんはご飯はどうされますか?」

いつも年下の俺に敬語を使ってくれる。

「あ、直さんは?」

「私は、どっちでもいいの」

「僕は是非、御一緒させて頂けたらと思います」

「あ、フフフ」

「え?」

「ごめんなさい。私がいけないのね」

「え?」

「もう少し、ざっくばらんに話しましょうか。敬語だと堅苦しくなるばかりよね」

「あー、でも…」

「大丈夫。“相棒”は居ないんだし、ね?」

「…では、はい」

いいのかな。癖になって、片霧さんと居る時、不意に素が出たらヤバいんだけど。
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