雨を待ちわびて

「あ、アイスティーとか、アイスコーヒーとか飲みません?ご飯前だけど」

「じゃあ、アイスティー」

「解りました」

石井君はすいませんと手をあげ、アイスティーとアイスコーヒーを先にと注文した。
この席は、店の奥まった場所で、柱の陰になっている。


アイスコーヒーとアイスティーが運ばれて来た。

「さっきの話、僕一人とかだったら、今の時間帯に出来るメニューしか無理だったと思います」

「そう?何でも駄目元で言って見るものよ?案外、いい方に転ぶものよ?」

それ以前の事なんだけどな、多分。マスターは直さんが入って来た時から、あっ、て、目で追っていた。
多分、前回、僕が没にしてしまった約束の日の直さんを、はっきり覚えている。
人によって分け隔てがあってはいけないのだが、僕でも直さんになら融通は効かすかなと思う。

「直さん」

「はい?」

「あ、いえ、何でも無いです」

……。


「お待たせ致しました」

二人分の料理が運ばれて来た。

「ごゆっくりどうぞ」

「さあ、食べましょ?」

「はい」

「駄目よ、慎人君」

「え?」

「一度話そうとした事を飲み込んでは」

「あ…はい。そうですね。では…、片霧さんとは今どんな…。いや、全くの第三者なんだから、僕は聞く権利も無いのですが」

「片霧さんとは…解らない関係、かな」
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