雨を待ちわびて
「何、泣いてる…。何故そんな恐い顔をしている」
また思い切り抱き着いた。
「自分だって傷ついてる癖に…。私は半分だった…大人だから。でも片霧さんは違う。…失って、傷ついた。まだ子供だったから…」
「直、………石井か…」
…。
「…まあ、…いい」
「良くない!…良くないです…私は気付けなかった。あの時、…気を回せ無かった。目に見えている傷痕にしか寄り添え無かった…。想像した肉体の痛みしか考えなかった。解ってます。余計な事は話さない人だから。解ってます。でも…」
片霧さんだって一生抱えて生きていかなきゃいけないモノがあるのに…。本当は心のどこか、弱いくせに…。
「私に甘えて…。いきなり変な事言っているのは解っています。私だって完全な健全では無いです。闇はきっとずっとあります。…傷が癒されるなら、私を使って…利用して…」
剥がすように離された。切なくて寂し気な顔…。
「そんな話は…。したら俺はもう直を抱けない。直は利用されて抱かれてるんだと思うだろ?
そう思う直が虚しくなるだけだ。そんな思いはさせたく無い」
「傷の舐め合い…」
「そうとも取れる」
「傷の舐め合い、したら駄目なの?私は自分の事で片霧さんに縋りました。思い切り縋り付きました。
まだ強くも無い、…弱いです。でも、片霧さんが、…事件を思い出して…、癒す為、やり切れなくて…シたくて誰かを求めるなら…私にして。私じゃ駄目?」
「直」
「はい」
「先生とはどうなんだ…結婚、するのか?」
「え?そんな事、今…関係ない」
「いいから」
「…いいえ、そんな事は全然決まってません」
「将来的な約束は?」
「え?」
「いいから答えろ」
「…何も…現状のままで、何も」
「…そうか」