雨を待ちわびて
これ以上濡れさせてはと、負ぶって傘を差したものの…。
これでは…俺の背中は、お姉さんの濡れそぼった服の水を吸い取り、濡れる一方じゃないか。
はぁ、これは…中々…ジワジワ来てるぞ、…寒い。
んー、まぁくっついてる分、辛うじてあったかいか。…そうでも無いな。
雨が強くなってきた。少し急ぐぞ。駆け出した。


ふぅ…はい、着きましたよ。っと。
さて、と…。取り敢えず…、まずは風呂だな。このままじゃ風邪をひく。

んーと、下ろして壁にもたせ掛けるように座らせると…、あー、横滑りすると、転ぶか。頭打つな…。
面倒くせーなー。このままで、いけるか。靴を脱がせた。

よし。風呂、溜めて、と。
背負ったまま蛇口を捻る。
…やっぱ…ぐっしょり濡れてるな。俺も結構、濡れちまった。簡単にシャワーで済ませて寝るつもりだったんだが。
…はぁ。もう、…溜めながら入るか。んじゃ…やっぱりちょっと下りて待っててくれよ。
床に寝かせた。手早く先に脱いだ。

「起きないもんだな…悪いけど遠慮無く脱がすからな」

あー、もう、濡れたモノは脱がしにくいもんだな。ボタンが、もう…、面倒臭いんだよ。うっかり破ってしまいそうだ。…その方が早いんだけどな。
…。
男故の邪な気持ちをなんとか抑え込む。

「俺は犯罪者じゃないからな。風呂、入れるからな?」

一糸纏わぬ女を抱き上げ、一緒に湯の中に浸かった。

はあぁぁ……、よく解んないけど、5分くらい浸かってたら、あったまるか。もっとか?まあ…成り行きだな。
二人で入ると元々狭い浴槽が余計狭いな。動けやしない。
体を洗う必要は無いだろう。
あ、待てよ…。確か、体、洗いたいとか言ってたな。…綺麗にしたいって。

…。

だけどなぁ…。当然、洗うって自分でってつもりだったろうし。取り敢えず、今はシャンプーだけでもしたらいいか?浸かってたら、身体はゴシゴシ洗わなくても、な?大丈夫だろ。第一、俺にゴシゴシ洗われたって解ったら、その方が嫌だろうよ。

…。

メイクはしてんのか?よく解らんが顔は洗っといた方がいいか…。
これで洗って大丈夫か?一回の事だ、OK、OK。顔も身体の一部だ。…文句があるなら後で言ってくれ。受け付けないけど。ボディソープを泡立てて、顔をクルクル洗って流した。適当だ。よし、こんなもんだな。

「出るぞ」

抱き上げて浴槽から出た。

…どうやって拭いたらいいんだぁ、…全く。ペタペタ触ったの?なんて言われても面倒臭い。
あぁ、取り敢えずバスタオルを巻いて横になっててもらうか。女のこんな世話なんて、した事無いからな。適当でいいよな。

バスタオルを巻き付けてベッドに下ろした。
ふぅ。
おわっ、フローリングがビッチョビチョになったな。

体を適当に拭いて素早く服を着た。
床も拭いて、と。さて…、と。
着替えの服はなんとかなるとして、…下着はなぁ、…無い。女物なんてある訳無い。
身につけていた物を洗って乾燥機に入れても、ちょっと時間はかかる。

…。

下は、俺の新品のボクサーで手を打つか。
そうと決まれば。濃い色のシャツを選別し、短パンもクローゼットから取り出した。
ボクサーを袋から出し、寝かせたままの体を拭き、穿かせた。シャツを着せ短パンを穿かせる。
俺の身体にもたれるように座らせ、髪をガシガシ拭いた。
風呂、着替え、望み通りにしてあげましたよ?
後は…、お泊り、か。
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