雨を待ちわびて
どこの誰だか解んないけど、この感じの服だと、普通の社会人だよな。バッグの中を確認すれば、素性くらいは解るってもんだろうが。そんな事は勝手には出来ない。それこそ…職権濫用だ。知ったところでだ。本人が望んだ結果、ここに居る訳だし。
なんで雨に濡れてたんだか。…傘が無かったからか。……飛び出したのか。……。そうせざるを得ない状況だったのか。
…。
誰も突っ込んでくる奴がいないと、独り言も虚しいな…。何でも事件に繋げるのはどうかと思うが…。煙るような雨の中、まるでそこに居ないような…、抜け殻みたいに立っていた。目に俺は映っていなかったかも知れない。何かがあった事は間違いないだろう。…事件性が無いといいが。……女性だ。服に乱れは無かったと思う。ヒールも両方履いていた…。
女性は気の毒な目に遭いやすい。特にこんな容姿の女性は、被害者になり易いとも言える。……嫌な世の中だ。
…何があった。
どうせ濡れるなら、家を目指して歩けばいいものを。なんで帰らないんだ…帰れないのか。
うっかり近いって言ったから、俺ん家を選んだ。濡れてるから…それだけか?綺麗にしたいって言った…。身体…。考え過ぎか。
理由は解らないけど、訳有りって事には違いない。それがどんなもんか知らないけどな…。
あぁ…、俺、いつまで肘付いて、顔眺めてんだろう。
…。
寝るとヤバイからな…。はぁ、そろそろ限界なんだよな…。流石に俺も肉体の疲れが来てる。普段流すだけなのに、風呂に浸かってしまったから…、余計眠くなって来た。
…よく、…ここまで…我慢したよ…駄目だ。もう知らないぞ…おやすみ、…お姉さん。
…何だか…ムニュムニュするな。ん、…久々の感触……柔らかいんだけど。……あー、女だ。…………女?
…。?!!ヤッバッ。胸…、揉んでた…。通りで…柔らかいはずだ。多分、何かの拍子に手に触れたから、だよな。……。言い訳だな……。はぁ、いつの間にか寝てたな。これってヤバイよな…。
…訴えられるか?。
「…構わないですよ」
?!
「…触っても」
「ぁ…起きてたんだ」
揉んだからか?…。
「いや…何か悪いな。つい。ごめん、すまん!無意識に…男の性って言うやつが…こう…手が触れたら…勝手に」
どんな言い訳だ。しかもちょっと、揉んだジェスチャー迄しちゃったし。
「……いいんです。有難うございます。連れて来て…泊めてくれたのですね。それに、これ…お風呂、入れてくれて、服も、貸してくれて…」
俺のした事に驚かないのか…?張り倒さないのか?随分冷静だな。
「途中から喋らなくなったからだ。返事もはっきりしないから、雨もずっと降ってるし、運ぶしかなかったんだ。それより熱はないか?大丈夫か?」
「…うん、はい、大丈夫です」
…お゙、なんだこれ。
「もう少し…寝かせて…」
脇に手を入れられ、抱きしめられた。…なんだ、…この懐に入って来る感じ。無意識に甘え上手なのか?……。なんだ、この女…。混乱する。
「…ガッチリした身体してる。気持ち悪くない………安心…する」
おっ…。は?…。
「…明日、…お休みですか?」
「あ?…あぁ、まぁ、な。おい…」
俺が困惑するわ。なんでこんな…。
「…そう」
…ん?だからって俺が眠れなくていい訳では無くてだな…。ん?ぉ……ん、んん?
「…色々、お礼…」