雨を待ちわびて
ふぅ。あの野郎、思ったより抵抗して暴れやがって。居場所の知れたとこに居るんじゃねえよ。…馬鹿が。
逃げる気が無いんなら、暴れるなっつうの…。無駄な抵抗だって解ってんのか、全く。
はぁ。流れ落ちるシャワーのお湯が古傷を濡らす。
トラウマは無いが…今更痛くも無いのに、傷を見る度、あの時の痛みは簡単に蘇る。
だから、直だって…。いや応なしだ。
頭の中で心の痛みは付き纏う。…一生な。
はぁ、ハハ…。真っ直ぐ帰って来てるじゃないか、俺。
…特別な事はしない、なんて。こうして帰って来ている事が、既に特別じゃないか。
いつもの俺は酒を飲んでいた。ヤマが片付いた日は必ずと言ってだ。
それが…直を拾ってからだな。妙に帰って来てしまう。
…優しさとか、そんなもんとは違う。敢えて言うなら、求めて、が正しいだろう。
…何も無い、特に帰りたいとも思わなかった部屋に帰って来るのは、直が居るからだ。直が欲しいからだ。
暑けりゃ暑いなりに、寒けりゃ寒いなりに過ごしていたのに…。
きっと今年は、…暑ければ、エアコンを点けろだとか、寒ければ、ヒーターも買うか、なんて、言ってしまいそうだ。
快適に過ごせってな。
…そう言えば、帰らない事、知らせるのが当たり前みたいにメールまでしたな…。
こんな…お洒落気なソファーなんてもんは無かったのに。これは直がここに来て直ぐに買ったもんだ。
…ちゃんと寝ない為にだ。
大分、汗も引いたけど、風呂上がりのパン一のまま、寝る訳にもいかないか…。
Tシャツも着たく無い。人が居るって…面倒臭い。
…ふぅ。…水、貰うぞ。
…寝るか。