雨を待ちわびて
嫌。あ、嫌、じゃなくて、…困る。ううん、困るっていうのは…ドキドキして、困るっていう事。
後先考えず、初めて片霧さんに身体を投げ出した時とはもう違う。
暫く離れていて、芽生えたモノがあって…。それが、とても邪魔をして以前のようには上手く飛び込めない。
ソファーから落ちないようにしっかり抱きしめられている事。このままだっていい…ずっとこのままで居て欲しいと思っている…。
身体も、…心も、片霧さんを求めようとしている私の心を、片霧さんが好きかどうかは解らない。
…もう、あんな大胆にはなれない。
この2年間、私がどう過ごして来たか、…何もかもこの人は知っている。どんな事をしていたか…全部見てしまったはず。
片霧さんが何もかも知ってしまったという事を、私が知ってしまったから。
ここに居るという事…恥も外聞も無いのかって…。よく平気で…、片霧さんに消して貰おうだなんて、出来たものだ…。
投げやりだった心は、本来の自分では無く、私を大胆にさせていただけ。
あの時の私は…もう、どうでも良かったから。
そして、…その時の繋がりが片霧さんを忘れられなくさせてしまった。
居ていいという言葉に、何の抵抗も無かった。
簡単に甘えた。
ずっと会えないと、会いたいと思うようになってしまった。
ただ、拾ってくれて、事件に関わりがあって…面倒を見てくれた刑事さん。それだけだったのに…会いたいと思うようになってしまった。
…。
「会いたかったです…。
…凄く会いたかったです。退院出来るかもって聞いてから、もっと会いたいって思って…」
「…欲しかったのか、俺が…」
大きな手で顔を包まれ、髪を撫でられた。
うっ…言い方…。あの時の…消して欲しくて身体が欲しかったのとは、違う…。
「そ、そんな、事…」
理屈はそうでも…言えない。欲しかっただなんて…。そればかりじゃ無いって。だけど、…それも無いとは言えない。
また情熱的に、何も考えられない程、抱いて欲しいと思っている。
でも、欲しいなんて言い方…、はっきり言えない。
…身の程を知って、自覚したから。
「どうなんだ…。俺は…欲しくて堪らない。直の事が…」
もう爆発しそうだ…直…。