雨を待ちわびて
「…ここじゃ無理だ」
抱きしめたまま抱え上げた。
「…許可を取っておく。どこもかしこも今から触れる。いいか?」
あ、…。もう、喉元の辺りに唇は触れている。
「はい、大丈夫です」
…はぁ…片霧さん。嬉しい。
「ん」
欲しいと思いはぶつけても、荒々しくは出来ない。退院したばかりの身体だ。存分にぶつけられない熱がもどかしい…。
痩せていた直の身体は、また、ふっくらとした柔らかい身体に戻りつつあった。細いのは細いけどな。
…そうか、カロリーを摂ったという事か。ご飯も美味しく食べていると聞いていた。だから退院出来たという事だ。
心だけじゃ無い、体も病むところだった。
「直…心配したぞ」
「え?…あっ…そんなに見…」
脱がせた直の身体を抱きしめ少し離す。
「…あのまま、このおっぱい、無くなっちまうのかと思った…」
「え?ちょっ、いや……そんなに…見ないで、ください」
直は勿論恥ずかしがって隠すのだが、その手を退けて、俺の身体に腕を回させた。
「はぁ…直…。話を聞きに会いに行った時、凄く…痩せてたからな。胸が小さくなろうと、別にそれがどうって訳じゃないからな?…直は直だ。だけど、痩せてたからな…心配した」
今だから言える。抱きしめた直の頭を胸に押し付けるようにして撫でた。
「…はい。当たり前なのでしょうが、食事面で、とても気をつけて頂きました。栄養素というのは、やはり脳に大事な物ですから。脳の思考は気持ちに作用しますから。それとは別かも知れませんが…だからイソフラボンとか、気にして摂りましたよ?」
「イソフラ、ボン?…ボン?」
「あ、もう…、その、ボンでは無くて…でも、そうですね、女性にいいと言われている成分です。女性ホルモンに似ているらしいです。痩せて…薄くなって…小さくなってたのは、…やっぱり気になりましたから」
「…ふ〜ん。で、結果、その成分は身体にいい影響はあったのか?」
「さあ…どうでしょう…」
…。
「見た目は解ったけど、試して見なきゃ解んないか…」
直の身体。ズリズリと少し上にずらし、背中に腕を回して抱きしめた。
自然と俺の顔の前になった直の胸。唇で触れた。
ぁ……、ん、あっ。
……あぁ、…この声………直。
「…直。余計な事は考えるなよ…。今は、…俺だけを感じていればいい、俺だけだ…」
柳の事なんか思い出すな。そんな奴は居なかった。そう都合良く思えばいいんだ。
俺でいいのなら、触れたモノ全て、初めから俺だったと思えばいいんだ。いくらだって俺が消してやる。