雨を待ちわびて
「本当に嫌じゃないのか?本当に大丈夫なのか?
する事に、心に負担は無いのか?」
しつこいようだが大事な事だ。
「大丈夫です、ありません」
「そうか。だけど、確認の為とは言え嫌な事を聞いてすまなかった。ごめん、この通りだ。
言い訳だが、男社会というか、がさつな環境に居ると…気遣うという事が足りなくて、出来なかった。すまん」
いきなり、起き上がり、ベッドに頭を付けて謝られた。これがこの人の普段の筋の通し方というモノなのだろうか。男の人に頭を下げさせてしまったなんて…。
申し訳ない。
「そんな風に謝らないでください。片霧さんは別に悪くなんかないです。
…私が昔と同じ…、抵抗出来ず、流される弱い人間なら、嫌と言えないと思ったんですよね。それは違いますから。嫌なら、自分の意思で抵抗出来ます」
片霧さんは抵抗したら、無理強いはしない人だ。と思う。
「解った。嫌になった時は言ってくれ。俺が求めてもしたく無い時は全力で抵抗してくれ。俺とする事が必要無くなった時もな」
…あ、やはり、どこか誤解してる。消す為だけに、私が片霧さんの身体を必要としていると思われている。
守ると言ってくれているのは、そういう意味で言っているのかも知れない。それは違うのに。
必要無くなるなんて、違うのに。
違うって言いたい…。
でも、私は…無理矢理とは言え、所詮お金を受け取る契約で柳としていたような女…。
…願ってはいけない。
「…抱いて…くれませんか?」
いつ、終わりになるか解らない…。
「今日はもう無理をするな…」
「無理じゃ無い…して欲しい………欲しい…」
…心が寂しいのです。
「…もう駄目だ。病み上がりじゃないか…」
「…じゃあ、片霧さんが出勤する迄。呼び出しが掛かる迄、こうして抱きしめていてください、…ずっと」
…。
「ああ。…寝るぞ」
「はい。……有難うございます」
こうするだけで、気持ちは伝わるものなのだろうか。
きつく抱きしめる事が、思いの強さの現れなら、優しく抱かれているのは安らぎ?安心?て事なのかな。
…。
RRRR…RRRR…。ブーブー…。
「はい、片霧。…………ん、ああ、…了解。………あ゙?大丈夫だ。余計な事を。……すぐ行く」
ふぅ、…。直、…眠ってるな。
…。
服を身につける。……、よし、行くか。
はぁ。駄目だな。部屋を出る時に、後ろ髪を引かれるようでは…。良くないな。
ベッドに腰掛け、俯せに寝ている直の頭に手を置いた。
背中が見えてしまっている。
布団を肩までゆっくり引き上げた。肩の隙間を埋める。
…。
もう一回戦、しておけば良かったか。…直、したがってた。欲しいって。…何も、今日で最後って事ではない。だから、無理にはしなかった。…まあ、堪えたんだ俺が。
…。
柄にもなく、頬に口づけてみた。…これでは腑抜けになってしまう。
フッ。石井に会った途端、顔見て言われそうだな。
本分、本分ですよってな。
…行ってくるか。