雨を待ちわびて
「先生〜、久遠先生〜」
「お、来ましたね」
「はい」
「どうです?変わり無いですか?」
「ん〜、はい」
「おやおや。何かありましたか?」
「ん〜」
「ま、いいでしょ。待っててください。今、飲み物を買って来ますから。あ、中庭の、ベンチで待っててください」
「はい」
「はい、ミックスジュースです」
「有難うございます。あの」
「奢りですよ。あ、そうそう、カランコエ、上手く育ちそうですよ?
しっかりしたら、鉢に取って植えましょう。もうそろそろ大丈夫かと思います。また花が咲きますよ?」
…片霧さんがくれた花。
「守田さん?どうされました?何も言ってくれないと心配になります」
先生の左手が頬に触れる。
「あ…、え。久遠先生…」
「はい?」
「私が…、人を好きになるのは、難しい事なんでしょうか」
「…これは、また…、恋ばなですか?お悩みは恋愛でしたか…。
守田さん?…人を好きになるのは、難しい事ではありません。だってですよ?好きって、いつの間にか勝手になっているでしょ?
反対に、恋心をコントロールするなんて、至難のわざです…。
好きになったら止められないでしょ?
ただ好きでいるだけなら、相手に迷惑もかけていませんよ?」
「…そうですね」
言わずにただ好きなら。
「思いを知って貰いたいのですか?打ち明けたいと、思ってる?」
「…誤解されたく無いだけなんです」
「好き、嫌いの、誤解ですか?」
「身体だけだと思われたく無いんです」
「お、……これはこれは。中々、ディープなお話なのですね」
「あっ、すみません。ボーッと、うっかり…。なんて大胆な事を口走ってるんでしょう、私」
既に関係があると思われた。
「いやいや、構いませんよ?ここはそういう所ですから。話せるのなら何でも話してください?そういう約束だ」
「…はい」