雨を待ちわびて

「先生〜、久遠先生〜」

「お、来ましたね」

「はい」

「どうです?変わり無いですか?」

「ん〜、はい」

「おやおや。何かありましたか?」

「ん〜」

「ま、いいでしょ。待っててください。今、飲み物を買って来ますから。あ、中庭の、ベンチで待っててください」

「はい」



「はい、ミックスジュースです」

「有難うございます。あの」

「奢りですよ。あ、そうそう、カランコエ、上手く育ちそうですよ?
しっかりしたら、鉢に取って植えましょう。もうそろそろ大丈夫かと思います。また花が咲きますよ?」

…片霧さんがくれた花。

「守田さん?どうされました?何も言ってくれないと心配になります」

先生の左手が頬に触れる。

「あ…、え。久遠先生…」

「はい?」

「私が…、人を好きになるのは、難しい事なんでしょうか」

「…これは、また…、恋ばなですか?お悩みは恋愛でしたか…。
守田さん?…人を好きになるのは、難しい事ではありません。だってですよ?好きって、いつの間にか勝手になっているでしょ?
反対に、恋心をコントロールするなんて、至難のわざです…。
好きになったら止められないでしょ?
ただ好きでいるだけなら、相手に迷惑もかけていませんよ?」

「…そうですね」

言わずにただ好きなら。

「思いを知って貰いたいのですか?打ち明けたいと、思ってる?」

「…誤解されたく無いだけなんです」

「好き、嫌いの、誤解ですか?」

「身体だけだと思われたく無いんです」

「お、……これはこれは。中々、ディープなお話なのですね」

「あっ、すみません。ボーッと、うっかり…。なんて大胆な事を口走ってるんでしょう、私」

既に関係があると思われた。

「いやいや、構いませんよ?ここはそういう所ですから。話せるのなら何でも話してください?そういう約束だ」

「…はい」
< 60 / 145 >

この作品をシェア

pagetop