雨を待ちわびて
「話は変わりますが、ご飯は?ちゃんと食べていますか?」
「はい」
「やはり孤食なのですか?」
「はい。特に気にはなりません。期待しなければいいだけですから。元々…ずっと一人で食べてましたし」
「そうですね。これは世間の、他人様の話ですが。
帰りの遅いご主人に、不満に思う事って、それなんですよ。まさにご飯。
…折角、作ったのに。要らないなら連絡してくれたらいいのに。一緒に食べようと待ってたのに。って。
どうしても、一緒の時間を共有したいから、思ってる以上にそこに期待してしまうんですよ。中々割り切れない思いもあるんですよね。
その次には…いつもこんなにちゃんと作っているのに。待ってるのに。帰ってきたら、食べて来た。とか言う。
している事に感謝してくれ無いから、報われないって思ってしまう。
何もかも、感情を削ぎ落として、相手に全く期待しない、関心が無いというのも寂しいモノですが。過度の期待が充たされなかった場合、思わぬ裏切られた感に繋がりやすいモノですからね。
最終的には、こんな人だと思わなかった、ってね。冷え切った、関心の無い夫婦になってしまいますね。
ちょっとの事なんですよね…。いつも有難う、ごめんな、って、話せばいいのに、出来なくなってしまうんですね。少しずつ、時間の経過と共に…駄目ですね。
最初は好きで、大事にしようって思って一緒になった筈なんですが」
「先生?」
「おっと、滔々と喋り過ぎましたね。声を掛けて貰って良かった。
ま、人それぞれ、関係性が変われば、色々あるモノです。
ところで、守田さんの話はどこまででしたっけ?」
「ご飯の話、でした」
「あー、そうでしたね。そこから奥さんの愚痴の話になったのでした」
奥さんの、愚痴?
「世間一般の話ですよ?」
…考えてる事、読まれてる。疑問のあるような顔をしていたのだろうか、私。
「はい。だから、私は、初めから期待せず、お負けと思うようにしています」
「それは、それで、一つのいい考え方かも知れませんね。日常の全てが、相手の事だけになってしまわない事がいいのです。依存しきるのは良くない。他にも目を向けると“なお”いい」
「あ、ハハハ、はい。尚、いいですね」
「はい、その、尚、いいの事ですね」