雨を待ちわびて

「どうですか?今日は一緒にお昼を食べてみませんか?
外のお店に誘い出したいところですが、食堂で。
そろそろお昼ですから。守田さんが都合悪くなければ、ですが」

あ、もうそんな時間に…。

「久遠先生は大丈夫なのですか?私、随分長い時間、お話をしていたんですね」

「カウンセリングの時間ですから問題ありません。それに、お昼はお昼ですから、こちらも問題ありません」

「は、い」

「話しに来ているのですから、余計な気は遣ってはいけませんよ?」

「はい、有難うございます」

「今日はですね、特別メニューの日らしいんです。
カレーの日だってボードにありました。グリーンカレーとか、キーマカレーだとか、ちょっとメニューが豊富な日みたいですよ?
スパイスは食欲も増進します。どうです?カレーはお嫌いですか?」

「好きです、大好きです。先生が都合が良いのであれば、私は大丈夫です」

「そうと決まれば、…白衣は置いていかねばなりませんね」

「え?」

「もしもカレーが飛んだり、零れたりしたら、恥ずかしいですからね」

「あ、フフ。はい、そうですね。汚してしまうと中々落ちませんしね。
でも、いいのですか?食堂で、私と二人なんて。
困るような…誤解は生じませんか?」

「んー、矛盾してしまいますが、今日は特別です。だから、いいのです。
さあ、行きましょう」

「あ、はい」

立ち上がった背中を、さあ、さあと押された。
先生も、いつもご飯は一人って言ってたし。こんな機会でも無いと、誰かと安易に食べたり出来ないのかも知れない。
でも、いいのかな。
ここは病院で、知る人ぞ知る、先生と患者だから、いいのかな。
< 63 / 145 >

この作品をシェア

pagetop