雨を待ちわびて
「片霧さん」
「ん?」
「怒ってますか?」
「ん?……何を」
「…情報提供者の事です」
「…石井だろ?」
「はい。今帰りましたからって」
フ。最近は真っ直ぐ部屋に帰ると読まれてるからな。
「別に、直に対しては怒ってない。石井はシメるけどな」
「…そんな、やめてください」
「いいんだ。されると覚悟して、解ってしてるんだから」
あいつ、直の連絡先、…職権濫用じゃないか。
「でも、よかれと思ってしてくれたのだから、し、しめたりしないでください」
「フ、解ってる。大丈夫だ。それより…、もう、石井の話はいい。…石井、石井、言いながら……シたく無い…。頭に浮かべたく無い。直だけ見たいんだ。直だけ、…感じたい。……直」
ぁ、…。ぁ、片霧さん、…。
「…片霧さん、今日は、雨?」
「ん?ああ、小雨が降ってたな」
「じゃあ、出掛けて来ます」
「どこか行きたいところがあるのか?」
「はい。マンションの現場が見たいと思って」
「フッ、現場ね。じゃあ、午後から行くか…」
「…え?…一緒に行けるのですか?」
「ああ、休みだ」
「でも、だったらもっと眠って休まないと駄目です」
「寝るのは夜寝るからいいんだ。昼間寝るのは調子が狂うから、寝ても仮眠程度でいいんだ」
「それで大丈夫なんですか?休みって言っても…急に呼び出しが掛かるかも知れないし…」
「ああ。…急な呼び出しはもう習慣だ。気にしてたらどうにもならない。
直は?夕べはちゃんと眠れたのか?」
片霧さんを思って、あまり眠れなかった。でも…。
「それなりに」
「そうか。じゃあ、今は寝かさない。俺に付き合って貰う。…未だ足りない。もっと、直が…欲しい。…ご飯は昼ご飯にする」
「あ、片霧さん…」
ん、んん…唇を沢山食まれた。そして沢山翻弄され続けた。