雨を待ちわびて

「片霧さん」

「ん?」

「怒ってますか?」

「ん?……何を」

「…情報提供者の事です」

「…石井だろ?」

「はい。今帰りましたからって」

フ。最近は真っ直ぐ部屋に帰ると読まれてるからな。

「別に、直に対しては怒ってない。石井はシメるけどな」

「…そんな、やめてください」

「いいんだ。されると覚悟して、解ってしてるんだから」

あいつ、直の連絡先、…職権濫用じゃないか。

「でも、よかれと思ってしてくれたのだから、し、しめたりしないでください」

「フ、解ってる。大丈夫だ。それより…、もう、石井の話はいい。…石井、石井、言いながら……シたく無い…。頭に浮かべたく無い。直だけ見たいんだ。直だけ、…感じたい。……直」

ぁ、…。ぁ、片霧さん、…。



「…片霧さん、今日は、雨?」

「ん?ああ、小雨が降ってたな」

「じゃあ、出掛けて来ます」

「どこか行きたいところがあるのか?」

「はい。マンションの現場が見たいと思って」

「フッ、現場ね。じゃあ、午後から行くか…」

「…え?…一緒に行けるのですか?」

「ああ、休みだ」

「でも、だったらもっと眠って休まないと駄目です」

「寝るのは夜寝るからいいんだ。昼間寝るのは調子が狂うから、寝ても仮眠程度でいいんだ」

「それで大丈夫なんですか?休みって言っても…急に呼び出しが掛かるかも知れないし…」

「ああ。…急な呼び出しはもう習慣だ。気にしてたらどうにもならない。
直は?夕べはちゃんと眠れたのか?」

片霧さんを思って、あまり眠れなかった。でも…。

「それなりに」

「そうか。じゃあ、今は寝かさない。俺に付き合って貰う。…未だ足りない。もっと、直が…欲しい。…ご飯は昼ご飯にする」

「あ、片霧さん…」

ん、んん…唇を沢山食まれた。そして沢山翻弄され続けた。
< 82 / 145 >

この作品をシェア

pagetop