雨を待ちわびて
マンションはどちらも良かった。適当は本当に程よい適当だった。
よく吟味して探してくれたのだと思った。そこに石井さんの助言があったような気はする。
俺なら勤務先からどちらも問題無いから、好きな方にしろと言う。
最初に見た方にしましょうかと言ったら、じゃあ、決まりだなと。
後は何だか、手続きを淡々と進めて、あっという間に契約は完了した。
「もう、いつでも入れるからな」
そう言って鍵を渡してくれた。
私と片霧さんの部屋。勿論、このままでは私は居候みたいなモノ…。
「片霧さん」
「ん」
「家賃、私も払います。折半してください」
「なんで」
…。
「でも、そうじゃなきゃ、可笑しいです。…私、居させて貰うのですから」
「なんで。居たらいいじゃないか。俺が契約した部屋だ。俺が居ろって言ってるんだから、居たらいいんだ。家賃とか、要らない話だ。俺一人で住んだら当たり前に要るものだ。妙な気を遣うな。居ればいいんだ。
……払いたいなら好きにしろ。受け取っても返すけどな」
どうにも払わせないつもりなのね。プライドなのかしら。
気持ちが…掴み切れない。私の気持ちも解って貰えて無い。
「…好きにしていいから。俺に何かしようとか思わなくていい。直は、直のしたいように生きたらいいんだ」
…。
自由でいいって事?でも…自由って、少しの束縛も無いのは、繋がりがないみたいで孤独だ。
…我が儘なのかな。孤独を感じるようなら、一緒に住まなければいいんだ。
…嫌になったら言ってくれ…。必要無くなったら言ってくれ、って、言われてる…。
「…私、…一緒に住みません」
「は?あ、おい、直!」
行く当てなんて無いのに部屋を飛び出した。