ALONE
『じいさんは?』

『また株やってる』

『…こりねぇなぁあのジジイ。流れとかわかんねぇくせに。』

『兄貴が教えてやりゃいいじゃん。』

『バカそれじゃインサイダーだっつーの。』

『…いんさいだー?』

『ガキは知らなくてよし。ちょっと待ってな。今イケメンに変身してくるから。』

兄貴は近くのとある銀行支店に勤める銀行マンだった。





『忘れ物ねーか?』


兄貴はスーツのネクタイを締めながら俺に言う。

『うん多分』


『よし。じゃぁ行くかジン。』

玄関先で逆光を浴びながらクールに微笑む兄貴の姿は

お世辞抜きにかっこよかった。

俺が兄貴の弟でよかったと常々感じる瞬間。



そう…



それもあの時が最期だった。
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