ALONE
思わず顔から笑みがこぼれた。


『榊!!何が可笑しい!!』



俺は顔から笑みを消し



ゆっくりと立ち上がる。



クラスの視線は俺に集まる。



教師は俺のその行動にひるんだようだ。



俺は真っ直ぐ教師を見据えた。




そして聞こえるか聞こえないかギリギリの音量で


ある歌の一節を口にした。



『仰げば尊し、我が師の恩…か』


隣のカイトが小さな声で言う


『ジン…どうした?』



『あんたみたいな人でも…いつか俺等は感謝するのかもしれないですね。』


教師は面食らってる。


『つーか…そうであってもらわなきゃ。…スイマセン時間とらせて。授業再開しましょう。』


俺は席に座るとカイト顔負けの偽善スマイルを教師に投げかけた。


『……っ!!!!』


教師は何か言いたげだったが


素早く黒板へ背を向けた。

チョークで文字を綴る音がデカい。

間違いなくキレてる。


教室からクスクスと漏れる笑い声


中にはパチパチと拍手をする奴もいる。


みんな俺を見てる。


それはいつか感じた無神経な視線ではない。


表現するなら…



そう


称賛。
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