ALONE
8畳ほどの部屋。



俺はクッションの上に正座して座った。


トオル先輩は外出中のようだ。


『そんなに緊張しないで♪今紅茶入れるわね。』


緊張しないで?




するっつーの。


『あ…お構いなく…』


『まぁ生意気♪』





どうやらなかなか人懐っこい性格のようだ。


個人的にどうもこうゆうタイプの人とはうまく喋れない。


キッチンで背を向けて紅茶を入れながら


澤井裕子は俺に話し始める。


『トオルからね、あなたのこといつも聞いてたの』


『はぁ…』


『最初に聞いたのは…去年の一年生が入学式だった日かしら?』


…いやそりゃそれが最初に決まってますよ。


先輩と出会った日ですから。


天然ってやつらしい。


『トオルね、帰って来るなり面白い奴がいるって私に楽しそうに話し始めたの。私も嬉しかった。彼があんなに生き生きした表情で私に話をするなんて久しぶりだったから…』


澤井裕子はティーカップを丸テーブルの上にそっと置きながらそう話す。


『お砂糖とミルクは?』


『あ、大丈夫です。』
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