ALONE
『私はあの子の将来を奪ってしまった。だから彼が嬉しそうにあなたの話をするのは…私にとっても救いだったのよ。』


俺は聞きながら紅茶を口にした。


ダージリン。


俺みたいな奴が口にしてはいけない大人の飲み物という感じ。


『でも先輩は…将来を奪われたなんて思ってないですよ。澤井サン…』


『ユウコでいいわ』


そう微笑む。


『いや…じゃぁユウコさんと一緒にいられることが…俺には先輩にとって何よりも幸せなんだって感じましたから。』


澤井裕子は悲しそうに笑みを浮かべる。


『ありがとう。彼もそう言うわ。でもね、私のわがままが彼にこれから待ち受けていたはずの将来を奪ってしまった。これは言い逃れが出来ない事実よ。』





『私は償うことの出来ない罪を背負っていく。でもね、せめて彼が笑って毎日生活してくれることが、ただそれだけが私にとっての救いなの。』
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