ALONE
澤井裕子の一言一言には先輩への深い愛を感じた。


俺はこんなにも人に愛された事はない。


当然だ。


俺自身が愛したことがないのだから。




ゆっくり部屋を見渡すと


可愛いぬいぐるみや


子供用のおもちゃがたくさん置かれていた。


極めつけは部屋の隅にあるベビーベッド。


俺は思わずベビーベッドを指差し尋ねた。


『…あの、アレは…?』


澤井裕子は顔を赤らめながら答える。


『あぁアレは…この子のためのよ。』


澤井裕子はお腹を両手で優しくさする。


…マジですか?


先輩19でしょ?


『まだ3ヶ月なんだけどね。私より彼の方が張り切ってて、毎日のように色々買ってくるのよ♪』





先輩にはいつも驚かされてばかりだ。



『ただいま〜』



ドアが開く音と同時に部屋に響いた懐かしい声。



先輩と久しぶりの再会。



俺は立ち上がって軽く会釈をした。



『…お久しぶりです』



先輩はあの時と同じクールな微笑みを浮かべ



俺を見る



『久しぶり。後輩♪』



憧れだったあの頃と今も変わらぬその笑顔で。
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