ALONE
先輩はあれからどうしていたのかを話してくれた。


卒業後


先輩は土木作業員として日々働いていた。


上司の愚痴や


自分より年上ばかりの同僚の話


ちなみに最近囲碁を覚えたらしい。


それは年上の同僚達とコミュニケーションをとるため?




違う違う




一局5千円を賭けて打ってるそうだ。


『今は子供のためにあぶく銭でも稼がにゃいかんからさ。休憩時間も死活問題なわけよ。』


先輩の話に俺は苦笑にも似た笑いを浮かべながら


耳を傾ける。


環境や境遇は変わっても



ここはあの時の屋上のまま。



居心地の良さは



あの日のまま。



楽しい時間とは過ぎるのが早く感じるのが常。


あたりはもう暗くなっていた。



先輩は外まで見送るよと俺に言い


俺は澤井裕子にお礼を言って席を立った。


『今日は来てくれてありがとう。凄く楽しかった。また来てね♪』


…はい



必ず。



その言葉を心に留め



俺はもう一度澤井裕子に会釈した。
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