ALONE
耳障りな機械音とともに

門が開く。


車から運転手が降りてくる。


『君…そんな所で何をしてる』


俺は車の中の後部座席に一人の男を確認した。


恐らくアイツが…



美姫の父親であり…




実の娘に性的虐待を行った



悪魔。




俺の内なる怒りはもはや限界を越えていたが



頭の中は最高にクールだった。



俺は運転手に答える。



『あんたと…車に乗ってる男にちょっと用がある。』



運転手はジロジロと俺を見る。


服装はあの日と同じダークスーツ。



再び運転手は聞く



『…約束は?』



俺は笑う


『んなもんねぇよ。



あんた…俺のこと覚えてねぇか?』


しばしの沈黙


俺は続けた


『去年の夏…遊園地…』



『……!!』


気付いたようだった。


その時


後部座席に座っていた美姫の父親がドアを自分で開けて出て来た。


『吉川、なにやってる。会議は8時からだぞ。そんなガキに時間をとってる暇はない。』


俺はその瞬間


ポケットの中にあった『ある物』を


開かれた後部座席のドアに向けて


力いっぱい投げ付けた。
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