ALONE
それは



運転手の脇を通り過ぎ



見事にドアの窓ガラスをブチ抜いた。



飛び散るガラスの破片。



美姫の父親は



『…ひぃ!』


なんて情けない声を上げながら


地面にへたりこむ。



運転手が吠える



『旦那様!……貴様…何をする!』


今俺を止められる奴は世界中どこを探したって見つからないだろう。


俺は言った



『忘れ物だよ。


あいつの。


届けに来たんだ。』




そう



俺が投げ付けた『ある物』



それは




あの日美姫が俺に託した




携帯電話だった。



俺は言い放つ


『国がお前達みたいな奴を裁かないなら…



俺が裁いてやる。』


運転手は徐々に呼吸を早めながら



俺に言う。



『何を言うんだ…。あの日貴様がしたことはな、れっきとした誘拐なんだよ!裁かれなくて救われたのは貴様自身だ!』


俺は運転手の方へゆっくりと歩き始めた。



『俺が救われた?



あの日俺がしたことに罪の意識なんて何一つないんだ。



俺は正しかった。



…それより



…俺あんたに一つ聞きたいことがあったんだ。』
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