ALONE
『…ハイ。



そうです。



救急車を一台。




症状は…




全身打撲です。』



場所を伝え


携帯を閉じると


俺は張り裂けそうな胸の痛みを抑えられず


顔を歪め


泣いた。






《お父さんを嫌いになれなかったの》





俺は怒りと悲しみの雄叫びを上げながら



奴を殴った。




《何もわからなかった…。でもね…辛かったな。》




何度も殴った。



《行きたかったなぁジンの家…あともうちょっとだったのにね♪》




何度も…




《ちょっとの間だったけど…夢みたいだった。ありがとうジン。あなたのこと…忘れない。》



何度も。



俺の胸に突き刺さる美姫の思い出の言葉達が痛くてたまらない。



《本条財閥の長女(15)自宅にて首吊り自殺》




止まらない俺の心の悲鳴は



今まで聞いたことのない絶叫となって俺の口から飛び出し



更に俺の目から涙が流れるのを助長する。




痛いよ…



苦しいよ…




その時俺の拳を横から誰かが掴む。



そして同時に我に返った。


その手の主は


吉川だった。
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