ALONE
紙には墓地の名前が記されていた。




俺は紙を受け取り



ポケットに突っ込むと



吉川に尋ねた。


『…あんた…これからどうする?』







『肉体労働だろうが…日雇いだろうが…探してみるさ。』


吉川はまだ涙を目に浮かべたまま精一杯の微笑みを俺に向けた。


『この場は私がなんとかするから、さぁ君はここから早く。』



俺は言われるがままFXにまたがり


その場を足早に走り去った。


ミラーに映った吉川は



俺が道を曲がる瞬間まで



その場所に立って俺を見送っていた。



奴に同情はしない。



美姫を救えたはずのあの男を



俺は許してはいけない。




だけど…




ポケットに入った紙を見て…




心の中で一言だけ奴に告げた。




『ありがとう』…と。
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